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12月19日  NEW

目次

22. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: INDICIO

23. 業界利害関係者、旅行者ペインポイント解決テクノロジーの役割語る

24. AF/KLM、AmadeusテックでL2B(予約率)改善

25. どれだけエージェンティックAIに準備できている?

12月15日

1. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: HOSPY

2. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: TRIPGAIN

3. Travelsoft、航空フルフィルメント airQuest 追加

4. ホスピタリティ再定義、サービス・AI・より多くの滞在方法で

12月16日

5. 欧州の鉄道ルネッサンス、近代的モビリティーに再編成

6. クルーズのテック導入とAIによる次の姿

7. Travelport、Webb の代わりに Mangelaars をCEOに

8. Navan、上場後にCFOの異動を発表

9. 法人旅行、2030年までに支払いがどのように変わるか

12月17日 

10. 無限の選択肢の世界でのインテリジェントな旅行の選択肢

11. Hot 25 Travel Startups for 2026: hostAI

12. The Phocuswright Conference 2025 Launch Innovator: Vio.com

13. 旅行者が優先航空会社、ホテル、またはOTAから「離反」している理由

14. DMOのAI 導入に関する課題と教育

15. スペイン、Airbnbに6,400万ユーロの罰金

16. TRAVEL'S MOVERS, SHAKERS AND NEWSMAKERS IN 2025

12月18日

17. 旅行パーソナライゼーション、まだ難しい理由と、やっと進歩の場所

18. Startup Stage: AirviaTech が航空券販売単純化

19. Exclusive Investments、Inspirato を5,900万ドルで買収

20. PhocusWright 2025トップ論説記事(10大論説):エージェンティックAI・NDC・優先順位シフト

21. 旅行会社がエージェンティックコマースに備えるべき方法

12月第2週の編集人コメント

 

12月10日掲載の「15. Amazon 対 Perplexity:旅行にも関係する訴訟を開始」は、今後の旅行流通を考えるうえで必読の記事である。

AmazonがPerplexityを相手取り起こした本訴訟は、AIエージェントがユーザーの代理として購買行為を行う法的権利を持つのかどうかを、初めて正面から問うものだ。「エージェンティック・コマース」をめぐる最初の本格的な司法判断であり、「プラットフォーム支配」と「エージェント主権」の衝突として位置づけることができる。

旅行業界にとっても、この裁判は単なるEC分野の争いではない。記事では、Amazonが勝訴した場合とPerplexityが勝訴した場合の双方を想定し、メタサーチ、OTA、旅行サプライヤーの競争環境がどのように変容し得るのかを整理している。

もっとも、本件はその性質上、白黒を明確につける判決にはなりにくいと見るのが現実的だ。AIエージェントをめぐる判例は存在せず、AmazonがAIを完全に排除する、あるいはPerplexityが全面的な自由を獲得するといった「0か100か」の結論は想定しにくい。むしろ裁判所は、AIの進展を止めるのではなく、一定の管理と秩序のもとに位置づける判断を下す可能性が高いのではないだろうか。

現在の流通構造そのものが、AIの進化によってこれから急速に揺さぶられる局面に入っている以上、司法が将来像を決め切ること自体が不可能とも言える。裁判が示すのは、変化を止める答えではなく、変化が起きることを前提とした最低限のルールに過ぎない。

その意味で本件は、結論以上に「問い」そのものが重要だ。AIが顧客接点を握るのか、ブランドやロイヤルティは誰の手に残るのか。これらの答えは、法廷ではなく、市場とユーザーの選択によって決まっていくことになるだろう。
そこで鍵となるのは、顧客データとロイヤルティに加え、パーソナリゼーションを軸に、人間とAIの双方に最適化された優れたユーザー体験をいかに構築できるかである。

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12月8日

1. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: HEYMAX

2. The Phocuswright Conference 2025 Launch Innovator: Etraveli Group

3. コペンハーゲン、グローバル観光報酬モデル、DestinationPay 立上げ

4. AirWallex、3.3億ドル調達で事業拡大とAI採用

5. ホテルの視点:OTAのAIパートナーシップ

12月9日

6. 今年新興企業投資、過去最低か

7. 地上輸送、現在の課題と起こりつつある変化への対応

8. Booking Holdings CFO、バーティカルAI体験の創造について語る

9. 旅行業界がEUDIウオレット試験から学んだこと

12月10日

10. 進化するインターライニングと未来の航空会社の小売り

11. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: HIG

12. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: GIMMONIX TECHNOLOGIES

13. Duve、シリーズB調達で6,000万ドル確保

14. CanaryとWyndham、フランチャイジーにAI音声技術を追加

15. Amazon 対 Perplexity:旅行にも関係する訴訟を開始

12月11日

16. パーソナリゼーションと旅行計画の進化を討議する

17. TRAVEL FORWARD: DATA, INSIGHTS & TRENDS FOR 2026

18. Expedia Group、Tiqets 買収でT&A事業拡大

19. Booking Holdings の戦略担当役員、オンライン旅行のAIの役割語る

12月12日

20. 今週の PhocusWire のトラベルテック記事のまとめ

21. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: THE DATA APPEAL COMPANY

22. TravelAI、OwnerDirect.com 買収して北米市場拡大

23. Expedia Group、AIによるデジタル旅行マーケティング改善を検討

2025年 12月第1週の編集人コメント

 

今週取り上げた記事を俯瞰すると、改めてAIが旅行産業の構造そのものを静かに、しかし確実に書き換えつつあることが見えてくる。

 

Spotnana のエグゼクティブチェアマン兼 CEO、Steve Singh が指摘する「旅行者の検索方法」「コンテンツの配信方法」「エージェンティックAIを前提としたサービス提供」という三つのシフトは、法人旅行に限らず、旅行業界全体に共通する変化だと言っていいだろう。旅行はもはや “検索して選ぶ” 行為ではなく、AIとの対話を通じて設計されるプロセスへと移行しつつある。(「11. 法人旅行のおける3つの重要シフト」)

 

Phocuswright の調査が示すように、旅行計画における一般検索エンジンの利用率が、過去1年間で、51%から36%に大幅減少している。一方、生成AIは6%から15%に倍増している。Google 検索の影響力低下は、検索依存型だった旅行流通モデルの転換点を象徴している。検索の主戦場は、検索エンジンからAIへと確実に移り始めている。(「8. 旅行の新玄関口、検索が切れるにつれて、AI発見急増」)

 

一方、「15. OTA、航空会社の流通コントロールで圧迫されている」では、航空会社による直販強化が OTA を締め上げ、結果的に市場の健全性を損なうと警鐘が鳴らされている。ただし、この文章は中小 OTA の CEO によるものであり、OTA 側の視点に寄った論調である点は冷静に読む必要がある。

航空会社が直販を強化する背景には、単なる中抜き志向だけでなく、AIによる販売・マーケティングの高度化がある。需要予測、動的プライシング、パーソナライズされたオファー生成といった領域で AI が実用段階に入ったことで、航空会社は従来以上に「自前で売り切る」力を持ち始めている。LCC のモデルを見れば、AIとデジタルを前提とした直販型戦略がすでに成立していることは明らかだ。

重要なのは、仲介を減らすこと自体の是非ではない。AIをテコにした直販戦略が、市場の効率性や価格の透明性、顧客体験をどこまで高められるのか、そこが本質的な論点である。航空会社の直販化と OTA の役割変化は不可逆だが、問題は、AIを使った直販強化が、顧客にとって「選択肢が増え、価格や条件が分かりやすくなる未来」につながるのか、それとも「特定の航空会社やプラットフォームに囲い込まれ、比較しにくくなる未来」を生むのか、という点にある。

今後の旅行流通を左右するのは、AIによって誰が “検索の入口(新玄関口)”を握り、誰が “旅の設計者” になるのかだろう。AIが前提となる時代において、航空会社、OTA、そして新たなプレイヤーが、旅行流通において、どのような役割分担とバランスを築くのか、その行方を注意深く見ていく必要がある。

▪️

12月1日

1. 旅行マーケターがコンテキスト、コンテンツ、コンバージョンを繋げる方法

2. Yatra、新 CEO Dhruv Shringi が取締役会長に就任

3. Evolve、Vacasa から Guestworks のポートフォリオ買収

4. ライアン航空、8ヶ月でメンバーシッププログラム終了

5. OTA がファンネル上部に移動、Agoda CEO 語る

12月2日​ 

6. 埋込AI活用時代のための旅行保険の再発明

7. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: GUESTOS

8. 旅行の新玄関口:検索が切れるにつれてAI発見急増

9. Wayve、Quality Match買収してAIデータ機能拡張

10. Expedia、初の「チーフAIとデータ役員」を設置

11. 法人旅行における3つの重要シフト

12月3日

12. 探索とインスピレーションでメタサーチ再考

13. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: WENRIX

14. Duda CEO、B2BのAIとレートパリティへの影響とバリュー語る

15. OTA、航空会社の流通コントロールで圧迫されている

16. Priceline CEO、OTAでの26年間と業界の進化を振り返る

12月4日

17. バックオフィスから利益創出まで:ホテルが支払を成長戦略に変革する方法

18. WP Holding、4,200万ドルで Fluege.de 売却へ

19. Capital One VenturesとUA航空ベンチャーズ、Mindtrip に投資

20. 法人旅行AIアシスタント Otto The Agent 立ち上がる

21. Amex GBT CEO語る、なぜAIがTMCを「強化し続ける」のか

12月5日

22. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: AB TASTY

23. PhocusWire のトラベルテック週間記事のまとめ

24. Pangea、最新コンソリデーション Nomadago 追加

25. DreamFolks、ドバイの Easy to Travel 60%買収

26. ホテル予約“フロントドア”、AIで変化

11月第5週の編集人コメント

 

以下に、(1)AIが旅行検索をどう変えるかの構造整理し、(2-1)「パーソナライズ」と(2-2)「コネクテッドトラベル」の重要性を加え、それを(3)OTA(BKNG / EXPE)の第3四半期決算と関連付け、そして最後に(4)警句:「成功は永続しない可能性がある」で完結させてみる。

 

(1) AIによる旅行検索の構造変化と、OTAの新たな位置づけ

AIの登場は、旅行検索の構造そのものを根底から組み替えている。

従来の検索体験(Before)は、ユーザーがキーワードを入力し、一覧から選び取る「能動的な探索」だった。しかしAI主導の世界(After)では、会話・文脈・パーソナライズを基盤とする“提案中心の旅” へとパラダイムが転換する。

 

AIによる旅行検索の構造変化(Before → After)

● Typing → Conversational

キーワード入力から、AIとの自然な対話を通じた旅づくりへ。

● SEO → GEO(Generative Experience Optimization)

検索エンジンに最適化する世界から、AIエージェントに“選ばれる”世界へ。

● Search → Recommendation / Discovery

ユーザーが探すのではなく、AIが好み・予算・状況を理解して“次の一手”を提示する。

● Single-turn → Multi-turn

一問一答型検索から、往復の対話プロセスによる共創型プランニングへ。

● Links → Integrated Experience

リンクの集合ではなく、AIが比較・予約・支払いまでを一気通貫でつなぐ。

● Device-based → Context-aware

「どの端末か」より、「誰と・なぜ・いつ旅するか」が判断軸となる。

● OTA(Aggregator) → AIエージェント(Orchestrator)

商品を並べる“棚”から、
複数の供給元を束ねて旅全体を自動設計する“オーケストレーター” へと役割が変わりつつある。

 

(2-1) パーソナルな旅行提案こそ、AI時代の中心軸

AI旅行の本質は、単なる検索短縮ではない。重要なのは 「旅のパーソナライズ」 である。

  • 旅行者の履歴

  • 嗜好や行動パターン

  • 旅行目的(休暇・家族・癒し・冒険)

  • 予算・日程・心理状態

こうした要素を統合し、AIが “その人の人生に合った旅行” を提案する。
従来のOTAでは到達し得なかった領域であり、AIによって初めて実現する価値である。

(2-2) コネクテッドトラベル:AI時代の OTA が目指すべきエコシステム

AIによるパーソナライズは、“旅の前・中・後”のすべての接点を統合することで一層強力になる。
これが Connected Travel(繋がった旅) の概念であり、OTAが今後生き残るための「旅行OS」的エコシステムといえる。

  • 事前の相談

  • フライト・宿泊・体験の統合予約

  • 旅程管理

  • 現地サポート

  • 変更・返金対応

  • ロイヤルティ循環

AIはこのすべてをシームレスに連結し、
“AIが旅全体を面倒見る” 世界を現実に変えつつある。

 

(3) Q3の好決算は、このAI時代の変化を最もよく反映している

実際、Booking Holdings と Expedia Group の2025年第3四半期決算を見ると、両社はすでに AI主導の旅行構造変化を先回りして取り込みつつある。

  • Booking:代替宿泊の構成比上昇、直販・アプリ経由拡大、AI統合によるパーソナライズ深化

  • Expedia:Comet・Romie・Smart Trip AI などの本格投入、B2B APIの急成長、AIによるマーケ効率改善

両社とも OpenAI とのプログラムを開始しており、
AIを 中核機能 として組み込んだ初の“OTA 2.0” 企業として市場から高く評価された。

 

(4) しかし──この成功が永続すると考えるのは早い

現時点では、BKNG も EXPE も「AI先行者利益」を存分に享受している。両社とも 2025年第3四半期で過去数年にない好決算を叩き出した。

だが、この成功が未来永劫続くと考えるのは早計だ。

AIが民主化すれば ─ 誰でも “旅行AIエージェント” を生成し、旅行事業に参入できる時代が確実に訪れる。
実際、すでにその前兆が見え始めている。

  • ソーシャルのTikTok や Instagram などが予約機能をオントップで搭載し始めた

  • スタートアップが AI旅行代理店を即時生成

  • Grab、LINE、WeChat などのスーパーアプリが「旅行OS化」

  • 航空会社・ホテルチェーンも AI を活用して直販を最適化

OTAの特権は、もはや“永続する前提”ではない。

AI新時代を OTA が生き残れるかどうかは、
“旅全体をつなぐコネクテッド・トラベルOSを構築できるか” にかかっている。

AIが旅の構造そのものを再設計する未来において、“検索結果を並べるだけ” の OTA には、もはや居場所はない。

真に競争力を持つのは、「タビマエ → タビナカ → タビアト」という旅行者の全行動をつなぎ込み(コネクテッドトラベル)、あらゆるタッチポイントを掌握する者だけだ。

OTAが「予約の終点」から脱却し、“旅を編成するオーケストレーター(AI Orchestrator)” へ変貌できるか ─ その成否が、次の10年の生死を分けることになる。

▪️

11月24日 

1. HOT 25 TRAVEL STARTUPS 2026: DirectBooker

2. PhocusWireの11月第4週トラベルテック記事のまとめ

3. Startup Stage: WildyNess、MENA旅行者と地元経験を結びつける

4. Googleのエージェンティック予約商業モデルは現在モデルと同じ

11月25日

5. 旅行事業の経営環境変化の中でリーダーシップを議論

6. カンタス航空、南豪にプロダクトイノベーションセエンター開設

7. Amex GBT、伝えられるところによると売却検討

8. パルスチェック: 業界利害関係者の最大関心事と楽観主義の源

11月26日

9. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: E23

10. THE PHOCUSWRIGHT CONFERENCE 2025 LAUNCH INNOVATOR: BOOMPOP

11. Pangea、旅行の断片化に対処するためソーシャルApp Overlap買収

12. エミレーツ、OpenAI提携でAI採用推進

13. バケーションレンタルのトレンド・変化・未来を概説

11月27日

Thanks Giving Day 休刊

11月28日

休刊

2025年11月第4週の編集人コメント

 

Booking HoldingsとExpedia Groupのだい3四半期決算を比較する。

こういうイメージかな、という形で Booking と Expedia を1枚の損益計算書比較表 にまとめてみた。

◆ Booking Holdings vs Expedia Group 2025年 第3四半期 損益計算書比較

                                                                              (単位:百万USドル、取扱高のみ10億USドル)

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※Expediaの前年純利益率は、684M / 4,060M ≒ 16.8%。

(AA構成費=Alternative Accommodation = 代替宿泊施設)Booking.com は Airbnb に対抗するために 代替宿泊(AA)分野の成長を最重要KPIの1つに設定 している。

(FCF=Free Cash Flow。営業CF(キャッシュイン)が非常に強い、設備投資(CAPEX)が極めて少ない、マーチャントモデルで「前受金」が大量に入る、OTAは“在庫を持たないため”キャッシュ創出力が異常に強い → その結果、現金が毎年積み上がる.

 

◆ Expedia と Booking の長期戦略比較

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BKNGは“巨大B2CプラットフォームのAI化”。

 

株価比較 直近1年の株価パフォーマンス

市場は、EXPE直近12か月リターン(株価上昇率)は、EXPEが +40〜50%前後に対してBKNGはほぼ横ばい(+数%程度)である。

市場は現時点では、

  • BKNG:高収益・高シェアの「ディフェンシブ優等生」だが、AIエージェント時代の不確実性もあり、バリュエーションは既に織り込み済みで伸び悩み。

  • Expedia:プロダクト再構築・B2B拡大・AI活用で、業績が目立って改善(ターンアラウンド)、この影響で株価が急上昇している。

  • ​アナリスト達は、BKNGもEXPEも両方とも「慎重な買い=Moderate Buy」としている。

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11月17日

1. ホテル運営プラットォーム MAIC、海外展開で100万ユーロ調達

2. AIイベント計画プラットフォーム BoomPop、2,500万ドル調達

3. 2025年の旅行業界のAI開発スナップショット

この他に以下の記事がありました。

Momentum and bottlenecks: India’s aviation in focus

What’s next for hospitality? 3 game-changing trends for 2026

(Amadeusの寄稿記事)

11月18日

4. Revolt、Booking/comと決済提携

5. Trip.com Group、第3四半期 国際OTA成長報告

6. Google AI Mode、ホテルと航空予約

この他に以下の記事がありました。

Indonesia deploys biometric corridor at airports

11月19日

​休刊

11月20日

7. 次回資金調達前にトラベルテック創業者が聞くべき3つの質問

8. Acai TravelとBoomPop、Phocuswright Conference 2025 Launchで受賞

9. Sabre、航空会社向け生成AIチャットソリューション開発

10. Peek、AI開発で7,000万ドル資金確保

11. SNS検索、旅行の未来にどのように影響するか

11月21日

12. VPNが優れたゲスト体験を生み出し、新しい収益を生み出す方法

13. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: DAZHBOARDS

14. Beyond Points、ロイヤルティとブランドの一貫性を再考する

15. Ramp 3億ドル調達、企業価値320億ドルに上昇

16. Barry Diller(Expedia Group会長)、Google、AI、旅行検索の未来 語る

2025年11月第3週の編集人コメント

 

先週のBooking Holdingsの四半期決算に続いて、Expedia Groupの決算を分析する。

 

1. ハイライト

  • 需要環境と成長

グロスブッキング:30.7Bドル(+12%)

売上高:4,412Mドル(+9%)

予約宿泊数:1.08億泊(+11%、米国の成長は過去3年で最高)

  • 利益とマージン

営業利益:1,036Mドル(+36%)、営業利益率23.5%(前年18.8%)

純利益:959Mドル(+40%)、EPS 7.33ドル(+45%)

Adjusted EBITDA:1,449Mドル、EBITDAマージン32.9%(+2.1pt)

  • 事業別動向(B2C vs B2B)

B2Cグロスブッキング:+7%、売上高+4%、Adj. EBITDAマージン40.7%

B2Bグロスブッキング:+26%、売上高+18%、Adj. EBITDAマージン28.9%
成長ドライバーは明確にB2B側。

  • 資本政策

Qに自社株買い451Mドル(約230万株)、配当0.40ドル/株を実施。

 

2. 損益計算書(概要)

(単位:百万ドル)

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マーケティング費用(Selling & marketing)は以下の通り:

  • ダイレクト(主にオンライン広告・パートナーコミッション)

1,976Mドル(+7%)、売上高比 44.8% 

  • インダイレクト(ブランドマーケ等)

211Mドル(+7%)、売上高比 4.8% 

マーケティング関連合計は売上の 約50% を占める構造。BKNG(約30%台)より依然として重い。

 

3. B/SとC/F

CFは季節要因で四半期ベースはぶれるが、過去12ヶ月間で見ると安定したFCFマシン((Free Cash Flow Machine)に戻りつつある。

 

4. AIとトラベルテック戦略

  • AI投資の位置づけ

プレゼン資料では、B2Bと並ぶ重点投資先として「AI」を明示。開発者生産性向上、カスタマーサービスの解決スピード改善、マーケティング効率化にAIを活用していると説明。

Expedia が誇る B2B モデルの肝は:

✔ Rapid API

✔ AI Trip Planner(B2B向け)

✔ Smart Trip AI™(旅行代理店・航空会社・金融アプリなどの外部パートナー向けの AI Trip Planner。Partnerサイト/アプリに AI Trip Planning を統合できる。)

✔ Comet(AI旅行ブラウザ)

✔ 支払い・税務・在庫管理のインフラ提供

これらは TAAP (Travel Adent Affiliate Program) ではなく EPS. (Expedia Partner Solutions) (API/ホワイトレーベル) の領域。

B2Cでは「Consumer GenAI Search Experience」を前面に出し、検索→比較→予約までの一連の体験を生成AIで再設計している。B2Cではコンシューマー向けAIエージェント Romieを持つ。

  • 具体的なAD/ユースケース

GenAI検索体験:自然文での相談から、宿泊・航空・体験などを束ねた候補を提示する対話型UI(アプリ内)

マーケ効率化:B2Cの「leverage against marketing spend」として、AIで入札・クリエイティブ・ターゲティングを高度化し、同じ広告費でより多くの予約・高いマージンを狙う構図。

開発とCS:AIを使ったコード生成・自動テストや、問い合わせ内容の自動要約・回答提案などでコスト削減とスピード向上を図っている。

  • OpenAIとの提携

2023年にChatGPT連携の会話型トリッププランニング機能をアプリ内に実装し、その後もChatGPT向けプラグイン/アプリとしてExpedia機能を提供。

2025年秋には、OpenAIの「ChatGPTアプリ・エコシステム」における主要トラベルアプリの一つとして位置づけられ、ChatGPT内から直接検索・比較・予約まで完結できるようになった。

Expediaは「自社サイト+アプリ」だけでなく、「ChatGPTという外部AIエージェント内でのレイヤー支配」を狙っている点がBookingより前のめりと言える。

 

5. マーチャント販売(Merchant)とビジネスモデル

10-Qによる売上モデル別内訳(3Q 2025): ​​

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  • マーチャント売上は2桁成長、構成比も7割まで上昇。増分は主にロッジング(ホテル+Vrbo等)。

  • エージェンシー売上は横ばいで、ビジネスモデルの軸足が明確にマーチャント側へ移行している。

  • 広告・メディア(EG Advertising)は+16〜20%成長と高い伸びで、在庫・需要データを活かしたトラベルメディアビジネスが拡大。

Bookingと同様、「マーチャント+広告+B2B」の組み合わせでマージンを引き上げる構造転換が進行中。ただしマーチャント比率が高い分、運転資本・キャンセル波・チャージバック等のリスク管理はより重要になる。

 

6. 総評(Bookingとの比較の観点も含めて)

  • 業績面

Expedia 3Qは「グロスブッキング+12%、売上+9%、営業利益+36%」と、トップライン・利益ともにガイダンス上振れ、かつマージン拡大という文句のない内容。

BKNGも売上+13%、グロスブッキング+14%と強いが、もともと利益率が高い分、マージン改善のインパクトはExpediaの方が大きく見える。

  • ビジネスモデルと戦略の違い

Expedia:B2B+広告+マーチャントに重点。米国中心で、ChatGPT連携を含むAI×ディストリビューションの実験場になっている。

Booking:代替宿泊・直販・アプリ・コネクテッドトリップなど、「欧州中心の巨大B2Cプラットフォーム」としての深化がメイン。マーチャント比率は約68%と上昇中だが、ExpediaほどB2B依存ではない。

  • マーケ効率

売上に対するマーケティング比率は、Expediaが約50%、Bookingが約30%前後。ExpediaはAIで効率化を進めつつあるが、依然として広告依存度が高く、ここをどこまで削れるかが中期テーマ。

 

Expediaのこの決算からは「AI時代の旅行OS化」へ向かう明確な兆候が読み取れる。

✔ Expedia では、AI時代向けの“ビジネスモデル転換”が既に始まっている。

✔ その中心は B2B成長・在庫API化・AI Trip Plannerの外販という「インフラ化」。

✔ B2C側でも Comet や Romie で“アプリ内AIブラウザ”へ転換。

✔ マーケ効率とキャッシュフロー改善が、AI投資を継続可能にしている。

OTAが弱体化するどころか、AI時代に合わせて 「旅行のOS」「AIの裏側レイヤー」へ進化していると言えるだろう。

 

次週の編集人コメントでは、Booking HoldingsとExpedia Groupの

株式市場の評価を含めた比較を予定しています。

▪️

11月10日

1. Hot 25 Travel Startups for 2026

2. Marriott、デフォルトで Sonder ライセンス契約終了

11月11日

3. Klook、米国上場に向けて始動

4. Amenitiz、航空商品成長と市場拡大で4,500万ドル調達

5. 旅行の生成AI的決済の未来

11月12日

6. ホテルとOTA、チャネルからゲストへ焦点シフト

7. Grab、リモート運転技術会社 Vay に6,000万ドル投資

8. データサイロからAIインサイトへの航空会社の旅の追跡

11月13日

9. HOT 25 TRAVEL STARTUPS FOR 2026: BIZTRIP.AI

10. Priceline CEO Brett Keller 辞任

11. Amex GBT、エージェンティックAIで Agentia アップグレード

12. 海でのAI:クルーズラインがジェネレーティブ技術を実用的ツールに変える方法

2025年 11月第2週 編集人コメント

 

Booking Holdingsの第3四半期は、増収増益の好決算となった。

ハイライト

  • 代替宿泊(Alternative Accommodation)
    2025年第3四半期の代替宿泊(AA)宿泊室数は前年比約10%増加し、全体構成比は36%へ上昇。掲載件数(listings)も前年比10%増となった。

  • モバイル予約
    直近12か月(TTM)におけるモバイルアプリ経由の予約構成比は50%台半ばに達し、2024年第3四半期(50%台前半)から上昇。

  • 直販(Direct Sales)
    直近12か月におけるB2C(Business-to-Consumer)直販構成比は60%台半ばで、前年同期(60%台前半)から上昇。アプリ利用比率とともに直販チャネルの強化が進む。

  • コネクテッド・トリップ(Connected Trip)
    Booking.com全体で「宿泊・交通・体験を一体化したConnected Tripモデル」の推進を強調。AI活用により、予約体験のシームレス化・パーソナライズ化を進めている。

 

損益計算書(単位:US$ Million)

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貸借対照表・キャッシュフロー

  • 第3四半期に、株主還元として自社株買い約7億ドルを実施し、配当3億ドルを支払った。
    さらに高利付債の償還に約15億ドルを充当。

  • 営業キャッシュフローおよびフリーキャッシュフローはいずれもプラス。
    年初からの累計(YTD)でフリーキャッシュフロー約77億ドル(前年比+6%)。
    旅行需給の回復とともに、キャッシュ創出力が維持されている点は評価できる。

  • 2025年2月、取締役会は200億ドル規模の新たな自社株買いプログラムを承認。
    今四半期末時点で累計180億ドルの買戻しを実施済み。

  • キャッシュ&有価証券残高は約172億ドル(9月30日時点)と潤沢であり、株主還元・債務償還を両立しつつ、財務の健全性と流動性を保っている。
     

AIとトラベルテック戦略

決算では「Generative AI」「AI統合」「パーソナライズされたConnected Trip体験」が主要テーマとして取り上げられた。同社はOpenAIとのテストプログラムを進めており、AIを通じて「顧客とサプライヤー双方に価値を提供する」仕組みを構築中。

旅行流通の観点では、AIが「宿泊・交通・体験」を統合する中核基盤となっており、マーチャントモデルと組み合わせることで、より多面的な収益機会を生み出している。
検索・レコメンド・チャットボット・リスティング最適化といったAI機能が、効率化・差別化・付加価値化を支えている。実際、報道でも「AIが予約増を後押しした」との評価が見られる。


マーチャント販売の進展

Booking Holdingsのマーチャント販売(自社決済)モデルは明らかに加速。
マーチャント・グロスブッキング比率は61%→68%へ上昇し、前年同期比+26%の成長を記録した。
構造転換が進む一方、マージン圧・運転資本リスク・返金・キャンセル対応などの負荷も高まっており、キャッシュフロー管理の巧拙が問われる段階にある。

 

総評

この決算は、旅行流通・トラベルテック両面で以下の示唆を与える。

  1. 「量」から「価値」への転換期
    Bookingは泊数・予約数の拡大フェーズを超え、今後は「予約単価」「ロイヤルティ」「直販率」「代替宿泊やライフスタイル領域拡大」など、価値創造フェーズへ移行している。

  2. チャネル構造の複雑化と最適化
    メタサーチ、直販、サブスクリプション、AI旅行プランニングの台頭により、OTAは“仲介”から“ソリューション提供者”へ変貌中。今回の決算でも直販比率・アプリ利用率上昇が確認され、チャネル戦略の成果が表れている。

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