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2024年 3月 第2週 の 編集人コメント

12. 米旅行代理店、旅行需要の回復と成長が明らかに」は、Phocuswrightのレポート“U.S. Travel Agency Landscape 2023” から引用し、米国の旅行代理店が2024年にはコロナ前2019年の総取扱高を超え、2026年には1,413億ドルに達すると伝えている。

一方、観光庁の「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、日本の総取扱高は、

  • 2023年11月         2019年同月比.     76.3%

  • 2023年12月         同                     77.3%

  • 2024年1月           同                     69.4%

と、至近3ヶ月間はコロナ前の規模を、かなり大幅にアンダーシュートしている。「強いドル」による為替の影響もあるようだが、米国旅行市場の方が、日本市場よりもレジリエント(回復力が強い)のかもしれない。

 

日本旅行業界では、「旅行代理店」という言葉はあまり使われていない。その理由は「代理店」という表現が、実態にそぐわないためだ。旅行会社は、単に代理するのではなく、自ら旅行商品を作り出している。だから、サプライヤーと対等の「旅行会社」 という表現が相応しいというのだ。しかし、それを知りながら、本書では敢えて「旅行代理店」という旧来の言葉を使用し続けている。なぜなら、英語の「travel agency」を「旅行会社」と訳すと、travel companyの訳とこんがらがってしまい、困ったことになるからだ。

なお、travel agencyとtravel agentは、本書では、前者が旅行代理店(組織)、後者がトラベルエージェント(人)と訳す。米国では、「home-based travel agent」*が圧倒的に多い。最近では、それを「travel adviser」と呼ぶようになった。何やらこの呼称変更は。旅行代理店から旅行会社への呼称変更に、どこか似ているような気がしないでもない。

*在宅旅行業従事者、日本では「パパママエージェンシー」とも言われている。

ついでに和訳に関して言えば、本書ではgross bookingsを総取扱高と訳している。Experienceは、体験であってほとんどの場合、経験とは訳さない。またpaymentの和訳は、「支払い」または「決済」、productは「製品」または「商品」、propertyは「物件」または「不動産」または「ホテル」と、適宜使い分けている。

 

日本の旅行業界では、かつて(1990年代から2000年代)、旅行代理店はただのチケット販売ではなく、「コンサルティングが価値の源泉である」という考えが広がり、「コンサルが大事」という言葉がよく使われていた。しかし現在は、大手旅行会社の多くは「店舗削減」「オンライン強化」「法人向けサービス強化」にシフトしており、観光旅行販売に対する「旅行コンサルティング」重視の考えは大きく後退してしまっている。

 

「風の旅行社物語」を著した原 雄二氏は、この本で「風の旅行社にしかできないことをやって他者との差別化を図るしかない。」と述べている。具体的なこの会社のバリュープロポジション(価値提案)が見えるようで小気味が良い。

 

相変わらずというか、むしろますます加速しているのが、「生成AIと旅行」のニュースだ。

今週号では、以下の4つが取り上げられている。

(1) 5. Kayak、スクリーンショットで航空券価格を比較する画像認識ツールを導入

(2) 7. AIで、旅行・観光業界の全従業員にグリーン移行の準備をさせる方法

(3) 10. OpenAI、欧州都市に観光向け生成AIの導入奨励

(4) 13. AccorのMaud Bailly、AIによる高級ホテルの体験向上について語る

 これらの記事を読むと、AIと旅行の相性は、特に「タビマエ(旅行前)」のインスピレーションや計画段階で非常に良いことがわかる。

 

しかしながら、専門家の中には「AIには人類滅亡の危機を引き起こすリスクがある」と指摘している人たちがいる。

  • 制御不能 - AIが意図しない行動をとり、人間の制御を超える可能性。

  • 軍事利用 - 自律型兵器やサイバー攻撃による戦争の危険性。

  • 社会崩壊 - 仕事の自動化による失業や経済の混乱。

  • 人類の主権喪失 - AIが重要な意思決定を担い、人間の役割が縮小する恐れ。

の4つのリスクが存在すると言っている。

 

一体全体、未来の社会はどのようになるのか、全くもって想像もつかない。仮にAIが人類を支配するようなことにでもなったなら、現在実用化が進められているAI旅行アシスタントやエージェントは、もはやアシスタントではなくなってしまうのか? 

関係が逆転して、人間が、AIの旅行をアシストする奴隷(?)となってしまうなんてことが、ひょっとして起こるかもしれない。

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