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2024年 3月第4週 の 編集人コメント

 

4. アジアにおける旅行決済の現状を探る」が、旅行決済がスムーズでないと、ファンネル(購買プロセス= 顧客が商品やサービスを知ってから購入に至るまでの行動を段階的に図式化したもの)の下部で摩擦が生じると警告している。特にクレジットカードの普及率が低いアジアでは、地域ごとに複数の決済方法を用意することが重要だという。Agodaでは、生成AIを使って旅行決済の改善を進めているそうだ。

ところで、ここでは、Travel payment を「旅行決済」としているが、「決済」よりも「支払い」の方がピッタリするかもしれない。

旅行流通でも、マーケティング用語であるファンネル(funnel:漏斗)という言葉がよく使われる。タビマエ(旅行前=旅行計画段階)における消費者の行動を指す言葉だ。「旅にでも行ってみたい・・・」と夢想する「旅への誘い」から始まって、最終の予約と決済(支払い)までのコンシューマー ジャーニーを指す。(この予約と決済の行為のことを、しばしばトランザクションとも呼ぶ。)

例えば、

(1) 「一体何処に行ったら良かろうか?」と考えながら、多くの旅行関連サイトが検索(数十ものサイトが閲覧)する。

(2)  そして目的地が決められて、具体的な旅行計画へと進む。

(3)  航空便や宿泊施設を予約しコンバージョンとなる。

クリック数でカウントすると、

  • 初期の検索段階では、膨大なクリック数が発生する。

  • しかし、最終的な予約時のクリック数は、わずか数回にまで減る。

  • コンバージョン率は極めて低く2%程度と言われている。

 

このように、最初の大量のサイト検索回数が、最終的な少数の予約へと絞り込まれていく様子が、まるで漏斗(じょうご=ファンネル)に水を注ぐ様子に似ているので、「ファンネル」と呼ばれるわけだ。

2. 大量のパーソナライズ動画で、旅行ブランドと顧客がつながる方法」では、このファンネルの入り口の箇所についてのマーケティング手法について考察している。ここでも生成AIを使ってよりパーソナルなビデオを作り、ユーザー(潜在的旅行者)に対してビジュアルに訴えて行くという。

しかし、生成AIがこのファンネル内のプロセスをすっかり機械化することになれば、コンバージョン率は飛躍的に向上し、ファンネルという言葉自体が死語になるかもしれない。もしコンバージョンが飛躍的に改善されれば、グローバルOTAの巨額のパフォーマンスマーケティングのコストも不要になる。否、それよりも前に、生成AIの出現によって、旅行業界全体にさらに大きなディスラプション(創造的破壊)が起こるかもしれない。

 

マーケティングには「コンシューマージャーニー」という概念がある。これは、顧客が商品やサービスを認知し、購入・利用するまでのプロセスを指すマーケティング用語であり、顧客体験を可視化したものだ。これを旅行に当てはめると、旅行者が「タビマエ」のファネルで旅行を計画し、予約(すなわち購入)(コンバージョンともいう)し、出発するまでの体験が該当する。

しかし、コンシューマージャーニーでは「ジャーニー(旅)」という言葉を用いながらも、実際には旅行の一部しか対象としていない。一方、コネクテッドトラベルの発想では、「タビマエ」から「タビナカ」、そして「タビアト」までの全過程を含む。旅行商品のマーケターは、このエンドツーエンドの「タビ」全体を視野に入れる必要がある。

そのためには、まず設計図を作成することが重要だ。旅行者の立場になり、「タビマエ」「タビナカ」「タビアト」の各段階で想定される痛点(ペインポイント:不便や課題)を洗い出し、それを設計図に落とし込む。この可視化された設計図に基づいて、順次ペインポイントを解消していけば、より優れた旅行商品が生まれるはずだ。もちろん、この設計図には、旅行者それぞれのパーソナルなニーズやウォンツも必ず反映させる必要がある。

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