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2024年 6月第4週 の 編集人コメント

 「3. ホテル、ベッドから王族体験へ動く」が面白かった。

旅行者にとって、目的地での体験は旅行先を計画する際の最重要要素である。多くの旅行会社がこれを新たな収益源と捉え、提供するサービスの差別化を図っている。

 

Phocuswright Europe Conferenceのホテル経営者が集うパネルディスカッションで、世界的ホテルチェーン大手の仏AccorのCEOが、自社のパリ近郊にある豪華ホテルについて紹介した。このホテルは、かつて女王のためのチャペルとして使用されていたフランスの歴史的建造物の一部を営業用の客室として提供しているという。これは、宿泊客の体験(エクスペリエンス)への期待に応え、ユニークな宿泊体験を提供することを目的としている。

Accorは、ゲストを王族のようにもてなすことで、特別な瞬間を忘れられない体験へと昇華させ、顧客満足度を高める戦略を取っている。会議のパネル討論会のメンバーたちも、このAccorの戦略に賛同し、ホテルは単に部屋と食事を提供するだけでは不十分であると口をそろえた。彼らの印象的な発言を以下に紹介する。

  • 「ホテルとホスピタリティは、ただ寝て朝スクランブルエッグを食べるためだけの場所ではない。それがホテルの本来の価値ではない。我々はエモーション・メーカーなのだ。」

  • 「体験への欲求を満たすための一つの方法として、ライブ・エンターテイメント会社との提携がある。ホテルでライブのイベントを開催する。」

  • 「私たちは新しいエコシステム……すなわち幸福産業を創造しようとしている。そのためには、ホテルの社内文化の構築が重要となる。」

  • 「通常の採用では不十分だ。ホテルのサービスに適した情熱とDNAを持ったスタッフを採用するために、応募者は自己PRのための5分間のオーディションを受けなければならない。」

  • 「成功するホテルの秘密は、強固な社内文化と高いサービスコミットメントにある。」

これらの意見からも、現代のホテル業界において、宿泊以外の体験の価値がますます重要視されていることがうかがえる。

 

1. 先進テック、ホテル拡大支援するか?」では、「ハイブリッド型ホテル(hybrid hospitality concept)」が、単にホテルの各部門を統合するという意味ではなく、 宿泊施設に加えて、コワーキングスペース、イベントスペース、長期滞在用のサービスアパートメント、学生寮などを組み合わせた多用途な運営モデルの形成を目指していると伝えている。  

The Social Hubの例では、単なる宿泊施設ではなく、ゲスト同士の交流を促進する「コミュニティ形成」を重視し、それに適した技術や運営方法を模索している点が特徴だという。

 宿泊だけでなく、さまざまな用途に対応する新しい形態のホテルが増えていると、[3. ホテル、ベッドから王族体験へ動く]のニュースと同じようなことをいっている。

 

5. TravelPerk、AmTrav買収して北米展開加速」では、2015年に設立されたスペインのTMCであるTravelPerkが、シカゴに本拠を置く競合他社のAmTravを買収し、2つのブランドの独自の技術と人工知能機能の統合に支えられ、米国最大の法人旅行管理会社になるといっている。この買収は、Softbank Vision Fund 2が主導して実現した1億400万ドルの資金調達*がバックボーンとなっている。ソフトバンクも外資の旅行会社に投資している。

*1月第4週「7. TravelPerk増資1億400万ドル、新法人旅行事業立上げ」参照

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